トンネル間の謎の階段

松ヶ瀬連絡道

TOP



短編 階段が好きなの、と、女の子は言った。


今回の舞台は、静岡県道64号線(島田川根線)
住所で言うと、島田市身成になります。

境川吊橋 Click!
国土地理院地図より

川口交差点から丹原地区へ向かう途中、3つの連続したトンネルを通過します。
南から順番に新鍋島トンネル・松ヶ瀬トンネル・丹原トンネル

このうち松ヶ瀬トンネルと丹原トンネルの間には わずかに地上へ出る区間があり、その両側に待避所のようなスペースがあるわけですが…。

謎の階段
GoogleMapストリートビューより

狭い!

実際に車で走ると分かりますが、ここはスピードが乗りやすい区間。
ドライバーにとっては一瞬で通り過ぎてしまう このスペース、何も無いのに ついつい目をやってしまうという人も多いのでは?

で、このうち山側に設けられた待避所には、とある構造物が見られるわけです。

謎の階段
GoogleMapストリートビューより

2021年9月撮影のものらしいのですが…わかりますか?

謎の階段
GoogleMapストリートビューより

ここ!

この画像のど真ん中!

…って、草だらけで何が何やらわからないので、同年の6月撮影という写真で見てみましょうか。

謎の階段
GoogleMapストリートビューより

階☆段

何故こんなところに…

通り過ぎる一瞬で見えるかどうかは、周りの植物次第。
旺盛な時期には完全に覆い隠されてしまいますが、枯れ果てた冬ならば ずっと上まで続く様子を見せてくれるのです。

果たしてこの階段はどこに通じているのか?
気になりませんか?

これはもう、行くしかないですよね?!



とまあ【 謎 の 階 段 】なんて煽ってはみたものの、だいたいの見当は付いてるんですけどね。
平成の始め頃、つまりはこの3連トンネルができる以前から 島田川根線を通っていた人ならば 察しはついていると思います。

謎の階段 Click!
国土地理院地図より

トンネルよりも高い位置に、かつての旧道が通っていました。
道幅は狭くすれ違いも困難で、観光バスなど来た日には渋滞になるような、そんな区間であったようです。
現在は落石などが散乱し 整備の手が入っている様子もないこのルートですが、廃道というわけでもありません。
山仕事であったり治山目的であったりと交通量はゼロではなく、あくまで旧道というイメージ。

今回のターゲットである“謎の階段”は、上画像に橙色線で示したように現在の県道と旧道とを結ぶ連絡道である可能性が高い。

いずれこの旧道区間のレポートなどもしてみたいと思いますが、特に見所もないんだよなぁ…。
とにかく、今回はあの階段にのみ焦点を当てて、進めていきますよ。

謎の階段
国土地理院地図より

というわけで、やってきました旧道に。

この赤丸の地点に、ガードレールの切れた部分があるんです。

謎の階段

そう、これこそが あの階段への入口!

ここを下って行けば、県道に出られるはずです。

と、そちらへ向かう前に、振り返って山側を確認しておきましょう。

謎の階段

見ての通り、緩やかな沢がずっと続いています。
少ないながらも水の流れもあるようですね。
それに沿って伸びているのは、おそらく治山のための工事道でしょう。
古い玉石練積みの石垣と共に2本のボロボロガードレールで挟まれた道が、島田川根線の旧旧道。

謎の階段

少し南側から写したこちらの写真の方が、全体が掴みやすいでしょうか。
途中から落石覆いとコンクリート擁壁に飲み込まれるようにして、旧旧道はその姿を消していきます。
この沢越えのポイントに限り、何代かの線形改良が行われたようです。

今回の調査対象である階段が、
“旧道を越えてさらに山奥へ、そしてその終点には謎の構造物が!?”
なんて展開をほんの少しは期待したりしましたが…。
まあ、そんなオイシイ物があったなら、ミニレポ扱いにはなっていないわけですからね。

それでは、階段に戻りましょう。

謎の階段

ちょっと大きめの写真を。
これが謎の階段の全貌です!
って言っても、植物のせいでほとんど見えませんね…。

謎の階段

少し下がって、階段の構成を見てみます。
まあ階段についての知識は全然ないので、気の利いたコメントなどできないのですけどね…。
とは言え、パッと見ただけても一時しのぎの造りではない事くらいは分かります。

謎の階段

階段横の法面はこんな感じ。
何らかの植物の種子を吹き付けた…わけでもなく、当地の雑草の生命力に任せている感じ、とでも言えばよいのか。
これも“植生工”になるんでしょうか?

謎の階段

さらに進んで行きましょう。
奥の方には県道が見えてきました。

それにしても…正直、(他の古物件に比べれば)綺麗なんですよね、ここ…。
冒頭のストビューで比較したように、季節によっては全く隠れてしまうような立地条件なのに この状態とは。
どうやら定期的に草刈りレベルでのメンテナンスはされているようです。

さらに下って行くと、写真のような踊り場がありました。
その中心を横切るように排水溝が通っていますが、グレーチング(網状のフタ)が一部しかありません。
夜など暗闇状態で歩くには、かなり危険な気がしますが…?。

謎の階段

もう一つ下の踊り場まで来ました。
踊り場は全部で3か所あります。
この段にも排水溝がありますが、その上に立っての眺めです。

謎の階段

静謐。

振り返って階段の姿を撮影。
通行量などほぼゼロに等しいであろう この階段を、自分の次に歩くのはどこの誰なのか。

謎の階段

待避所に到着!

段数は95段でした。数え間違えていなければですが…。
アスファルトが割れて、かなりの凸凹状態です。

謎の階段

振り返っての1枚。
一番下の踊り場で、わずかに向きを変えている事がわかります。

謎の階段

階段横のフェンスで囲われた開渠の中を、沢の水が流れていました。



ここで意を決して、県道を渡ってみます。
十分に安全なタイミングを見計らって、車道の反対側へ。

謎の階段

神社の入り口ですよ、と言ったら信じてもらえそうな雰囲気です。
こっそり鳥居でも建てておこうか。

謎の階段

こちら側の待避所、「フェンスで遮られた向こう側に何があるのか」と楽しみにしていたのですが、特筆すべきものは何もなく。
「左側の藪の方に道が続いていたりしないか?」と楽しみにもしていましたが、特に何もなく。

謎の階段

「さては右側か!?」と思いそちらに向き直ってみたものの、やはり何もなく。
つまりは、こちら側の待避所には何もない、という事が確認されました。

では、他に見るべき所もなさそうなので これにて撤収〜。


とまあ実際に謎の階段を歩いてみたわけですが、いかがだったでしょうか?

結局、ここは何なのか?って話になりますが。
待避所の広さや定期的な刈り払いがされている事などから考えて、トンネル内の事故や災害時の車輛転回場所、及び旧道への避難路として維持されているのでしょう。
って当たり前すぎる結論だな、これ。

ただ、そうだとするなら階段途中に街灯・非常灯が必要なのでは…?
あのままだと排水溝に落ちますよ、いや本当に。


そんなわけで、皆様も非常時には ぜひご活用ください。






名所File No.M03

松ヶ瀬連絡道

営業時間:年中無休
所在地:静岡県島田市身成
交通アクセス:島田市コミュニティバス 川根温泉線 丹原停留所より 徒歩10分(旧道)




調査完了。








TOP