古の木馬道を辿る

八光山森林軌道

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第3話 今は探索中はそれを思い出す。


現地調査編 〜中編〜

この現地調査編は、下図のように4区間に分けてレポートします。
*1話当たりのボリュームが多くなりすぎたので、調整しました。

八光山森林軌道 Click!
国土地理院地図より

写真をクリックすると現行地図と古地図が入れ替わります。



この軌道跡の所々で、写真のように年季の入った玉石積みの擁壁を見かけます。

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写真11

この見た目だけで年代を推定できるほど、知見を持ち合わせていないのが残念です…。
せめて軌道時代の物か廃止後の物か、それだけでも分かれば楽しいのですが。

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写真12

振り返って撮影した一枚。写真左が白光川側です。
路線の左側に、並行するように平らな地面が続いています。
今 探索しているのが森林鉄道跡であったのなら
「ここは複線部分か?」「いや、プラットホーム跡では?」
と興奮したのかもしれませんが、上下列車のすれ違いが発生しない木馬道では さすがにそれもなく・・・。
とはいえ ここに生えている木の細さを見るに、当時はここは開けた土地だった可能性も捨てきれません。



チェンソーズ on the hillというブログにて、“橇道”(そりみち)を実際に作る様子が記事になっていました。
“橇道”はそのまま木馬道と考えてもらって構わないと思います。
どんな形をしていて、どうやって木材を運搬したのか、非常にわかりやすいです。
完成した橇道、ちょっとこれ 凄すぎますわ・・・。
少しでも興味がおありの方は、ぜひ見て頂きたい。
またコメント欄にも載っていましたが、あきる野市武蔵五日市を舞台にした「五日市物語」と言う映画の中で、実際に橇(木馬)を引いている映像があります。
Youtube等にある予告編の中でも、数秒ですが見られますよ。


映画「五日市物語」予告編  橇道が登場するのは0:44あたり



と、上記リンクにある写真を見て頂けると分かる通り、木馬道を構成する物のほとんどが
とにかく遺構が残りにくいのです。
そもそも木馬道自体が長期間の使用を想定していない事、廃止の際には他の用途への転用が容易な事も理由にあげられます。
この先の終点まで辿ったとしてもおそらく何も残っていない可能性のほうが高い、というのを承知の上での探索行です。

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正確な位置が分からなくなってしまいましたが、道中に落ちていた看板。
看板中央あたりの肝心な部分は、全く読めません。
森林開発公団とは、昭和31年に設立された森林資源についてのあれやこれやをしていた団体。
後に緑資源公団となりますが、まあ色々と問題が多すぎて既に解体されています。

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前日の雨の影響もあり、この日はそこら中から地中の水が噴き出していました。

八光山森林軌道

活発になったサワガニが、せわしなく動き回っています。
うっかり踏まないように注意が必要なほど。

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写真16

ようやく、地図に載る大きさの沢まで来ました。
写真にわずかに写っていますが、重機が置いてあります。
おそらく治山目的の工事・伐採用だと思われますが、八高山方向へ登っていく作業道が支流沿いに奥へ続いていました。

八光山森林軌道
写真17

この沢をどんな形で超えているのか興味があったので横から覗いてみた写真。
丸穴状に水路を通したコンクリート構造物の上に土を被せてあるようです。
これは橋梁ではなく、一般的には“暗渠”に分類されるはず。
今回探索している軌道跡上では、こういった暗渠を用いて小さい沢を越えているポイントがいくつかありました。
これらは木馬道が廃止された後の普請によるものでしょう。

そしてここで初めて、この軌道跡の道を走るトラックとのすれ違い!
ご夫婦っぽい二人が乗っていたそのトラックは、怪しい余所者を尻目に川下方向へ走っていきました。

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写真18

支流を超えてすぐ、写真のように開けた場所に出ます。
見ての通り現在進行形で伐採・植林が行われていますが、この日の作業は無いようです。
これもまた先ほどの支流作業道の先と同様、治山目的の手入れだと思います。

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写真19

このあたりはアスファルトではなくコンクリート舗装
小さな沢を、鋼管に土を被せた暗渠で超えています。

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写真20

ひたすら美しい風景が続きます。
聞こえるのは白光川のせせらぎ鳥の声だけ。

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写真21

所々で玉石積みの擁壁を見かけますが、ここはさらにその上にコンクリート擁壁が連なっています。
しかもさらに上の方に目をやると、もう一段の壁が?
近くまで登って行っての観察はしていませんが、何のための擁壁でしょうか。

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写真22

と突然、広い茶畑のある空間に出ました。
GoogleMapの衛星写真でも、ハッキリと確認できます。
上の写真は、振り返って撮ったもの。
黒い軽自動車と茶畑用の農機具が写っていますが、肝心の作業者は見当たらず…。
何かお話を聞ければと思ったのですが、人の気配はありません。

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写真23

今にして思えば、大きな沢の所ですれ違ったトラックに乗っておられたのが所有者だったのでしょう。
朝は別々に来ていて、一度、昼食を取りに家に戻ったんじゃないかな…。
まあこの時はそんな事まで考えが及ばず。
しばらく周囲を伺ったりしましたが、あきらめて先へ進むことにしました。



そしてどうやら この畑の主が軌道跡道の最奥利用者だったらしく、ここから先は道の様相が変化します。

もちろん、

荒れる方向に。



次回は、現地調査編 〜後編〜



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