大井川にある島に行きたい

神尾弁天

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追記編:第7話

第7話 およそ調査には始まりも終わりもない。


【清水文庫】所蔵の動画の中で、神尾弁天島(舟山)が写っているシーンを発見しました。


昭和の風景動画第16集 大井川下り 昭和6年7月4日 川下り、新金谷、五和村居林、福用、笹間渡、徳山村地名、つり橋 昭和橋、下川根村石風呂、鵜山の七曲がり、家山、神尾峡、地層の褶曲、神座

これは昭和6年(1931)7月の川下り旅行を撮影した映像のようです。
(もともとは【清水文庫】というとても貴重な蔵書類・映像類の内の一つで、許可を取ってアップロードされているとのこと。
動画の詳しい説明はリンク先のYouTube説明欄をご覧ください。)


約90年前の映像…!!

一行は島田駅を出発して大井川鐵道 新金谷駅からSL列車に乗り、地名駅で下車。
そこから舟に乗って島田市向谷まで大井川を下ってきますが、その途中で舟山の横を通過するシーンが撮影されていました。
(動画の8:34辺り)

島田図書館を通じて許可を頂くことができたので、そのシーンをキャプチャしてご紹介します。
クリック後の写真は現在の様子です。
構図・スケールはちょいと違いますが、ご愛敬ということで。

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清水文庫【大井川下り_昭和6年7月4日(島田駅の様子、車で新金谷へ、ここから大井川鉄道の車窓、中川根付近で下車、大井川下り、大井川保勝会、秋野さんら)】より

大井川を下ってきて、舟山の西側(神尾地区側)を通過するところ。
川口発電所はまだ造られておらず、背後には濃い山肌が迫っています。
このころはまだ水量が豊富だったため、舟山の下半分は大水の度に洗われていたのでしょう。
現在ほど植物が生い茂っている様子はありません。

頂上付近に白っぽく見えるのは、矢竹でしょうか?
伝承が正しければ、この時代にもあったはずです。

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清水文庫【大井川下り_昭和6年7月4日(島田駅の様子、車で新金谷へ、ここから大井川鉄道の車窓、中川根付近で下車、大井川下り、大井川保勝会、秋野さんら)】より

さらに下って、舟山の下流端の様子。
弁天様の祠へのアクセス道は現代ではこの辺りが入口なわけですが、この頃も同じだったのでしょうか?

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清水文庫【大井川下り_昭和6年7月4日(島田駅の様子、車で新金谷へ、ここから大井川鉄道の車窓、中川根付近で下車、大井川下り、大井川保勝会、秋野さんら)】より

通り過ぎた後に、振り返っての映像。
なんとなく、現在よりも険しい岩肌に見えます。

【島田風土記 ふるさと 大長 伊久身】(島田市史編さん委員会 編・平成15年)によると、

「明治43年(1910)8月再び大暴風・洪水が襲い、折角の新築堂宇は流失し、すべてが水泡に帰した。その後の再建計画は進まなかった。その内昭和時代に至り太平洋戦争が勃発、舟山弁天への信心参りもままならず、終戦を迎えることとなる。」(島田風土記 ふるさと 大長 伊久身 より)

とあります。
となると、この動画に映っている舟山の頂上には何もない状態だった事になりますね。
その後、新たにコンクリート製の堂宇が造営されたのはおそらく昭和25年(1950)頃とも書かれており、自分が第5話で見たのは その時に建てられたお堂かと思われます。



さてさて、今回の本題。

神尾弁天島(舟山)参拝の正規ルートを確認する。


おそらくただの山道であろう事は分かっていますが、当サイトではこのルートの事を、
あえて【参道】と呼びたいと思います。

とりあえず現時点で分かっているのは入口だけ。
第6話で光明院のご住職にお話を伺ったときに、この話を聞いていたのです。
場所はここ。

Click!
国土地理院地図より

ほぼほぼ 地元の方々の家の前の細い農道を通るしかありません。

とりあえず状況を知るために それを承知で車で入り込んでみましたが、やっぱり方向転換にも苦労するレベル。
一度、神尾駅に向かおうと戻りかけたところで地元の人に声をかけられました。

「どこか行きたいだかね?」

「神尾弁天へ行くための、大井川へ降りる道があると聞いたんですが。」

「あー、この先にあるっちゃああるが…あんなとこ行くだか?!」

とまあこんな感じで色々お話を伺う事ができました。
昔は住職さんと地区の2〜3人?で弁天様まで歩いていったこと、
何年も前に地蔵峠の方に移してからは、誰も行っていないことなどなど。

「ほんなら鎌、持ってくか?えらい藪だし、イノシシも出るぞ?」

「助かります!危険そうなら、戻ってきます。」

「帰りはトラックのとこに置いといてくれればいいから。」

と、敷地の空いてるスペースに車を停めさせてくれた上に、良く切れる鎌まで貸してくださいました。
事前情報から予想していた以上に、かなりの難行程になりそう…。

いつも山へ入る時の装備に身を包み参道へと向かう自分を、にこやかに笑って見送ってくださいました。

「しかしまあ 物好きな人もいるもんだな〜笑」


いや〜それほどでも…(照)
(注:褒められてない)



準備が整ったところで、さっそく参道への入り口に向かいます。

神尾弁天参道

数件のお宅の前を通り過ぎたところで、一旦舗装は切れます。
正面に見える雑木林は、この地区と大井川を隔てる斜面そのものです。
第2話で登場した“横臥褶曲断層が良く見える場所”よりも、少し上流側になるようです。

Click!

曲がってすぐに舗装路が復活しますが、あくまでも農道。
軽トラック専用道、と言い換えて差し支えない道路です。

正面に見える山にも茶畑は広がっています。
第3話では、あの山を越えた向こう側の急斜面を降っていきました。

肝心の参道入り口は、写真クリック後の矢印のあたり。

神尾弁天参道

ここ…ですかね?

情報を入手してここまで来たとしても、植物が生い茂っている季節だったら気が付いたかどうか。
道路から1段下がった所に踏み場があり、そこから上流方向にむかって山道が続いているようですが…。

神尾弁天参道

ここ…ですよね?

その踏み場に立つと、こんな感じで参道入り口が出迎えてくれます。
確証がなければ まず踏み込まないレベル。

まるで『じぶり映画』にでも出てきそうな小道ですよ。

神尾弁天参道

少し屈みながら前進して1分もしないうちに、ややしっかりとした道幅が確保されるようになりました。
藪のトンネルは、最初だけのようです。

神尾弁天参道

少し進んで、竹藪の中へ。
事前の情報では、竹藪あたりの道が危うい、との事でしたが…。

神尾弁天参道

なるほど確かに、道の半分が崩れて大井川側の斜面に消えている部分が多くなってきました。
が、通れないと言うほどの荒れようではありません。

神尾弁天参道

ただ、何年も人が通っていないと言うのはその通りらしく、倒木や低い木の枝が度々邪魔してきます。

神尾弁天参道

それでも何らかの需要があるためか、最低限の手入れはされている感じがあります。

神尾弁天参道

竹藪地帯を抜けると、そこはもう一般的な登山道と変わらないようになりました。
特に危険を感じるような個所もありません。

神尾弁天参道

白飛びして何も見えませんが、かなり大井川が近づいてきました。
もうかなり降りて来ています。

神尾弁天参道

再びの竹藪地帯。

神尾弁天参道

しかし参道入口辺りの竹藪のような荒れ方はしておらず、歩行に支障はありません。

神尾弁天参道

河原へ続く最後の竹藪。
既に斜面を降り切り、ゆるやかに大井川へ向かう場面です。

神尾弁天参道

とうとう大井川が目前に迫ってきました。
竹藪の切れ目のような所から出ます。

神尾弁天参道

大井川到達!!

正面に見えるのは鵜網集落ですね。
少し拍子抜けするくらい、問題なく辿り着くことができました。
もっと過酷な山行を覚悟していたのですが…。

で、ここがどこかと言うと。

神尾弁天参道

おそらくこの赤矢印あたり。
舟山までは、まだまだ距離があります。
下流を見ると、こんな景色。

神尾弁天参道

正面の日陰になっている場所が“横臥褶曲断層が良く見える場所”のようです。

神尾弁天参道

これが上流の景色。
ここから上流に向かって歩いていくだけで、神尾弁天(舟山)に行く事ができます。
と言っても、川口発電所が僅かに見えるだけで 肝心のゴールはまだ見えていないのですが。

とにかくこれで、大井川へ降りる参道が確認できました。
が、この日は別の調査も予定していたため、これで時間切れ。
速やかに撤収します。

神尾弁天参道

…速やかに…。

…えーっと。

どこから出てきたっけ?
ちょっと離れただけで見失った…。

川沿いにうろついて登り口を探すこと数分。
なんとか見つけたので、帰路につきます。

神尾弁天参道

それなりの登り路ですが、第3話で通ったルートを思えば楽勝ですよ。

神尾弁天参道

道中で見つけましたが、これが何なのか、パッと答えられるような大人になりたい。

神尾弁天参道

ようやく参道入口まで戻ってきました。
最初に舟山から戻った時にも感じましたが、『異世界から戻ってきた感』が凄い。
何なんでしょうかね、これは。

調査結果に満足しながら神尾集落まで戻ってきた所で、畑の中に動くものを発見…。

Click!

お前か。

とまあこんな感じで、神尾弁天参道の確認任務を全うすることができました。
鎌をお返ししてから車に乗り込み、撤収〜。



以上が、神尾弁天様にお参りするための正規のルートになります。
最初に通った道程に比べたら天と地ほどの差がありました。
って、当たり前ですけど。

問題は、車を駐車する場所がないこと。
神尾駅あたりに停めて歩くしかない、でしょうかね。
「それでも行ってみたい」という方は山歩きできる恰好で行きましょう。
また、通る道筋は農道と言うよりは 生活道という表現の方が相応しい道路。
地元の方々にご迷惑をお掛けしないよう、心がけて下さいね。




調査完了。


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