民営森林鉄道の先駆け

智者山軌道

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第5話 霧が晴れたとき、元の世界にいるとは限らない。


今話は主に現地のレポートになります。
掲載している写真の縁取りが青ならば終点(土合)向き、橙色ならば起点(小長井)向きの振り返っての写真、と捉えてください。

レポート EP.5
智者山軌道

全体マップはこちらから。



前話の続きから。

智者山軌道 Click!
現在地

おー…。
不穏な空気があるね…。

この先の軌道跡は、上から流れてきた土砂に埋め立てられ その姿を消しつつあるようです。

智者山軌道 Click!
現在地

前に進みながら ふと下を見ると、現在地と小長井河内川の中間あたりに もう一段、平場が見えます。
「もしや自分のいる場所は間違いで、あちらが正規のルートか?」
と一瞬 疑いはしたものの、高さなどを考えて “それはない”と判断。

智者山軌道 Click!
現在地

軽く藪を掻き分けつつ、進みます。
進むにつれ、何かイヤ〜なものが見えてきたような。

智者山軌道 Click!
現在地

「崩壊した地形と、それを補修した擁壁があるな…」などとボンヤリ考えつつ近づいてみると、どうも様子がおかしい。

智者山軌道

そこは大きく抉られた沢のような地形になっており、中央には雨水を流す大きな排水路がありました。
どうやら雨水による浸食でできた沢に、後年になってから排水路を施工した感じ。
これはある意味、崩壊地どころか一番安定した状態なのかもしれません。

しかし自分のような探索者にとっては、これは痛い。
軌道跡など、ごっそり無くなってしまうからね…。
現時点において、完全に見失っております。

何にしても、このまま同高度を維持しつつ進んでみるしか方法はありません。
自分のいる地点は 崩壊面までかなりの段差があるため、下巻きをして再び軌道跡を探す事にします。

この時、足元にはこんなものが。

智者山軌道 Click!

ただのL字鋼を曲げた、簡易なフェンス部品っぽいけど…。
いつの物なのか?何に使われた物なのか?判断はつきません。

智者山軌道

道中で視認していた下の平場まで降りると、そこは小長井河内川にほど近い場所でした。
ここからなら、なんとか排水路に近づけそうです。

智者山軌道 Click!
現在地

これが排水路の全容
と言っても水路のほとんどが埋まっており…。
これは、大量の降雨時に ちゃんと用を成すのか成さないのか?

とにかくここを、軌道跡が想定される高さまで登り返しましす。

智者山軌道

年季の入った家庭用コードリール…かな?
そこら中に多種多様なものが落ちており、全てを紹介できないのが残念なところ。
ザ・昭和、といったアイテムがゴロゴロしていますよ。

智者山軌道 Click!
現在地

やっとのことで想定した高さまで復帰!
…したものの。

ご覧の通り、この先 しばらくは跡形もありません。
かなり広範囲にわたって崩れたらしい…。
傾斜もきつい。
次の軌道跡に辿り着けるよう、なるべく同高度を保って進む事に集中します。
この智者山軌道は 切り出された木材を人力制御で降ろしていたとの事なので、その性質上 終点に向けてずっと登り勾配で推移していたはずです。

智者山軌道

ちなみに、左手(小長井河内川方向)を見るとこんな感じ。
なかなかの絶景なのである。

智者山軌道 Click!
現在地

こんな状況のまましばらく進むと、地相がやや落ち着いてきたっぽい。
軌道跡は相変わらず不明のままですが…。

智者山軌道 Click!
現在地

とここで、再びの排水路。
軌道跡らしきスジがないか周囲を探すと…あれか?(クリック後の赤線)
気付かない内に かなり下ってしまったのか、それらしい地形をやや上方に発見しました。
なんとか近づいて、確認したいところ。

智者山軌道 Click!

しかし必死で登っているところで、まさかの大失態。

大コケ。

この排水路の両脇が幅広くコンクリートで補強されていたのに気付けなかった。
その上に土砂や落ち葉が降り積もり 覆い隠していたため、必然、それを踏んだ自分は容易くコケたのだった。

幸いにも、どこかを打ったり キズを作って出血!ということは ありませんでしたが…
これが後の悲劇を生むとは、この時の自分は知る由もなく…。(これについては、どこかの【探索!ウラ話】で。)

智者山軌道 Click!
現在地

さてさて、やっとのことで目的高度に到達。
右下に排水路が少し写っています。
これを見る限り、どうやら軌道跡に復帰できたようです。

智者山軌道 Click!
現在地

それにしてもずいぶんと高低差が出てしまいました。
やっぱり人間の感覚は当てにならんな…。
振り返って正しい道のりを探ってはみましたが、判然とせず。
ここまでも何か所かありましたが、こういった谷の地形となっている場所は やはり当時とは かなり地形が変わってしまっているのでしょう。
本来は もう少し直線に近かったと思います。

さて、旅を再開します。

智者山軌道 Click!
現在地

せっかく良い風情なのですが…。
ここにも色々と落ちている(捨てられている)のが残念。

智者山軌道 Click!
現在地

ここまで来ると ようやく様相が落ち着いてきました。
しかしどうにも、想定される路面幅より狭いまま。
やはり土砂崩れや長年の堆積などで半分ほど埋まっているのでしょう。
軌道跡は鮮明ですが、路盤自体は無事では済まなかったようです。

智者山軌道 Click!
現在地

!!!

良い!!

突如 霧に包まれたと思った次の瞬間、そこに幻想的な世界が出現!
もしやこれが、ご褒美タイムというやつなのか?!
一気にテンションが上がります。

智者山軌道 Click!

幻のような光景に見惚れているうちに、霧が晴れてきました。
真っすぐに伸びた杉林の中を、一直線に奥へと向かう軌道跡。
その途中にあるのは次の排水路ですが、路盤を乱暴に蹂躙することなく、一部としてうまく吸収しています。
せっかくなので、大きいサイズの写真を用意してみました。

智者山軌道 Click!
現在地

排水路に近づいてみます。
軌道跡によって生じた段差を うまく緩衝の段として活用している(ように見える)排水路は、ここから僅かな区間だけ石垣水路に切り替わり、その下で再びU字水路に戻っていました。
ただ、コンクリートのブロックによって 短いトンネル状になった石垣水路は完全に詰まっており、有事の際には全く役に立ちそうもありません…。

これは一体、いつ頃の施工なのか?
どの辺りが当時モノなのか?
それとも全てが無関係で後年に作られたものなのか?
現時点では まだ判明しておらず。

ふと上を見ると、旧静岡街道を視認する事ができました。
近い。

智者山軌道 Click!

周囲を観察しつつ ゆっくり進みます。
山側の路肩には、土留めの為と思われる 背の低い石垣が散在。
面白い事に これまで見てきたような練石積の石垣は少なく、乱雑に石を積んだだけの簡易的なものが多いようです。

正直、この区間は あまりにも奇麗な直線過ぎるので、「後年になって全面的に造成された区間なのではないか?」「軌道跡と思っている この平場も、実は全く無関係なのでは?」と疑ったりもしました。

しかしこれらは どう見ても年代物。
智者山軌道の現役当時に作られたとすれば、やはりここが軌道跡で間違いないはず。

で、2本目。

智者山軌道 Click!
現在地

再びの排水路
2連続。

智者山軌道 Click!
現在地

構成は1本目とほぼ同じでした。
トンネルが完全に詰まっている点も含めて。

そして、ここを越えると…。

智者山軌道 Click!
現在地

不穏な空気、再び。

どーなってるんだ?この先は。

智者山軌道 Click!
現在地

なんと、またもや排水路。
しかもちょっとデカい?!

智者山軌道 Click!
現在地

なんとここは、Y字の排水路でした。
面白い。

智者山軌道

合流地点より下は かなり太い石垣排水路に変わっていました。
小長井河内川まで一直線の、巨大滑り台。
怖ぇ…。

んで、当面の問題は この先だが…。

智者山軌道 Click!

全く、無い。

ここまで辿ってきた道程をそのまま真っすぐ伸ばしただけでは、軌道跡と思われるような地形を見出すことはできません。

智者山軌道 Click!

唯一それっぽい地形があるにはあるが、ちょっと高すぎる…。
しかも急激に登りすぎでは?
こちらが正しい軌道跡だとすると、たった今 通ってきた直線区間すら否定されることになってしまうが…。

智者山軌道 Click!
現在地

他に頼る道もないので、まずはそのラインに近づいてみます。
現在地はY字排水路の中間地点。

さて、(仮)の地形に近づいてはみたものの…。
やっぱり急激に登りすぎているな。
どうやらこれは お目当ての軌道跡ではないようです。

智者山軌道

さらに次の区間を視認できそうな位置まで一旦進み、その後、正規ルートと思しき高度まで下がってみます。
足元も覚束ないような急斜面。
再び軌道跡に復帰できることを祈りつつ前を向きます。

…前を…。

智者山軌道
現在地

うわぁ・・・。



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探索!ウラ話


今回の探索では時期を狙ったかいがあったのか、運よくマムシに出会うことはなかった。
なので今回はヒル、それも山ヒル(ヤマビル)についてのお話。

まずは、『平気な人』だけ↓こちらをどうぞ。

Google画像検索(閲覧注意)
Wikipedia(閲覧注意)
ヤマケイオンライン(閲覧注意)

山ヒルは登山者などに取りつくと、前後2か所の吸盤を使ってシャクトリムシのように体の上の方に上がって行きます。
なんと、動物が呼吸する際に発する炭酸ガスに反応して寄ってくるのだとか。
熱じゃなかったのか…。
休憩中に地面に置いたザックを経由して取りつかれるパターンも多いので、油断は禁物。

で、衣類の隙間から もぐりこんで皮膚に到達すると 固いところを避けて傷口や肌の弱いところを探し出し、喰い付く。
咬まれてもヒルの唾液には麻酔成分(ヒルジン)があるため痛みを感じないまま血を吸われる、と。

おおぅ…。

さらに血液の凝固作用を妨げる成分も含まれているため、吸血痕からの出血を見て気がつく場合が多い。
流血が広がりやすいものの、その傷は数日で治る。
ヒル自体には毒性はないといわれる。
などなど。

う〜〜む……。