民営森林鉄道の先駆け
智者山軌道
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第9話 それまで僕は青空を見たことがなかった。
今話は主に現地のレポートになります。
掲載している写真の縁取りが青ならば終点(土合)向き、橙色ならば起点(小長井)向きの振り返っての写真、と捉えてください。
レポート EP.9
全体マップはこちらから。
前話の続き。
現在地
断崖に阻まれ、再び
旧川根東街道へと敗走することになった調査員。
しかしこれは天啓だったのか?
街道への退避行をしている最中から、急激に
空模様があやしくなってきました。
雷雨。
しかも、光った瞬間から音が鳴るまでの時間が短い。
つまり
雷雲が かなり近いところまで来ているという事。
この時点ではまだ 初日に比べて遥かに短い時間しか探索できていない状態でしたが、安全には代えられません。
無念の撤退。
急いで
連絡道入口付近に停めてある車へと戻り、以降の探索は次回への持ち越しとなりました。
そして ここからは
探索3日目。
ここにきて初めての
晴天。
しかもこの日は長く時間を確保できていたので、どこまで行けるか楽しみです。
さっそく、前回のセーブポイントへ戻ります。
現在地を参照して頂くと分かりますが、この上陸地点の すぐ先には大きな沢があります。
現在地
ご覧のとおり、沢の上には
アーチ状の石垣が組まれています。
まるで その上が軌道跡かのように見えますが…。
高さ的に考えて、
ここは違う。
高すぎる。
軌道跡は、もっと低い位置でここをパスしていたはず。
何かしらの痕跡が残っていないか、一応チェックをしておきたいところです。
Click!
現在地
というわけで、3日目は
この位置から調査開始。
撤退してきたポイントから10mも離れていません。
問題は、この下に軌道跡が残っているのかどうか確信が持てない、
【賭け】の状態での降下になること。
未踏破区間が短く済むのか、はたまたすぐに戻ってくる羽目になるのか…?!
まずは下を覗いてみましょうか。
急 …だな、おい。
ほんとにここ降りて大丈夫なのか?
立ち木を利用すれば なんとか降りていけるけども。
まあ、気にしないようにしよう!
これが、今回越えるべき沢の様子。
手前側の沢は先ほどの写真の、アーチ状の石垣があった沢。
よく見るとそこに、もう一本の沢が合流しているのが分かります。
Click!
現在地
さらに降ったところで、どうやら軌道跡らしき平場を発見。
なんとかあそこまで行ってみます。
Click!
現在地
軌道跡と、
再会!!
どうやら、
【賭け】には勝てたようです。
Click!
起点方面へ振り返った図がこちら。
残念ながら ほとんど戻ることはできませんでした。
一応、未踏破区間が短くて済んだと喜びたい。
さて 前に向き直って旅の続きを…、と行きたいところですが。
Click!
現在地
当然のように、沢と交差する地点で軌道跡は欠き消えてしまいました。
うーむ。
ここから、沢の上流方向を見上げたのがこちら。
やはりあの石垣とは高さが全然違います。
で、問題はこの沢の越え方。
正攻法で考えれば、ここを橋で越えていたはずなのですが…。
Click!
対岸をぼーっと眺めてみると、なんとなく それらしきスジが見えました。
あれが軌道跡の続きでしょう。
その先もずっと続いているのが分かります。
Click!
しかし今、目の前にあるこの2本の沢をどうやって越えていたのかがわからない。
(この写真は奥の沢)
一応、この先の軌道跡を目で追って こちらまで戻ってきたラインを写真に書き込んでみましたが…。
当然の事のように 沢周辺の山肌は年月の経過とともに変化しており、当時の地形を想像するのも難しい状態。
Click!
足元の沢の中を探しても何も見出せず。
ただ、唯一、可能性としてはこれが石組みっぽく見える事。
ここまで軌道を支えてきた、
石垣の続きではないだろうか?
Click!
これを石垣の一部と仮定してルートを想定してみたのがこちら。
割と自然な流れで繋がっていると思いますが…。
残念ながら、この
2本の沢越えルートを断定することはできませんでした。
さて このまま先へは進めないので、再び急斜面をよじ登り、
旧川根東街道へ。
現在地
街道は、この写真のすぐ左手(静岡方面)に倒木があり、完全に塞がれています。
現在地
これが沢の上からの眺め。
V字の谷です。
現在地
こちらが2本目の沢。
1本目同様 石垣がアーチ状に組まれていますが、その上には軌道跡を疑ってしまうような段はありません。
旧川根東街道を支えるための構造物だった、というわけです。
現在地
2本目の沢を覗き込んだところ。
軌道跡の予想ルートは もっと下流にあり、この写真では見切れていて 写っていません。
現在地
沢をぐるりと回り込んだ地点のカーブ先端。
ここから降りて、再び軌道跡への復帰を目指します。
ここは、
旧川根東街道と連絡道の結節点に ほど近い場所。
そのポイントが目視できる距離にあります。
まあ こうやって見ると かなりの急斜面なのですが…。
もう慣れた。
躊躇なく降ります。
Click!
現在地
おそらく、これが軌道跡の続き。
Click!
現在地
振り返ってみます。
白飛びしてます。
見辛くて申し訳ない。
右の方にギリギリ、さっきまでいた場所が写っています。
ここからの小長井河内川の眺め。
川音の響きが心地良い。
さあ、旅の再開を。
Click!
現在地
ここまで同様、尾根状になった緩やかな部分には軌道跡がしっかり残っています。
しかし、これを越えると…。
Click!
現在地
…やっぱり。
どうにも この繰り返しになってきました。
一見、踏破は無理そうですが ここは踏ん張りどころ。
中央突破します。
Click!
現在地
実はこの区間、ゴール地点(軌道跡の続き)が見えていたんですよね。
これが無ければ、迷わず撤退していたでしょう。
Click!
現在地
ヒィヒィ言いながらも、その 見えていた部分に到達!
…と思ったら、また沢だ。
Click!
現在地
一度 振り返って、さっきまで歩いてきた軌道跡を確認。
Click!
さて、沢越えですが…。
ここも橋で越えていたのでしょうか?
対岸には、この先のルートがハッキリ見えています。(ピンぼけだけど)
実は このポイントは…。
Click!
現在地
あの
連絡道と
旧川根東街道の交差点直下に当たる場所なのです。
なのですが…。
ご覧のとおり、不法投棄されたゴミが…。
Click!
現在地
気を取り直して、再びの軌道跡へ。
Click!
現在地
大きめの石がゴロゴロしていたり、太い杉が ど真ん中に育っていたり。
これまで盛んに
「軌道跡」などと書いてきましたが、どこからどこまでが
正解なのか、確認のしようもありません。
Click!
現在地
この先もなんとか続いてくれているようです。
と、ここで
意外な発見が!
なんとなんと、
静岡県の用地杭!
県の用地との境界線を示すものですが、これは
旧川根東街道由来のもの、と考えるべきでしょう。
(ここが本来あるべき位置なのかは わかりませんが…。)
で、この用地杭、よく見ると…。
旧字体!
静岡県ではなく
靜岡県となっているじゃあないですか。
自分はまだ こういったジャンルについて詳しく調べる術を持っていないのですが、いつ頃から現在の
静岡県表記に切り替わったんでしょうかね?
ちなみにFileNo.10の
境川橋の時に発見した用地杭は、しっかりと
静の字でした。
Click!
現在地
さて用地杭を過ぎると、ご覧の通り(一応は)綺麗な軌道跡が。
土砂によって埋められ本来の幅を確保できていませんが、辿れるだけマシというもんです。
Click!
現在地
直線的に登っていきます。
それにしても…
晴れっていいなぁ!!
Click!
現在地
またもや尾根状の地形を越えます。
ここまで、
「良くない事」は だいたいこういう地点を越えた直後に起こっているわけですが…。
Click!
現在地
覚悟を決めるため、一度 振り返っておこう。
やはり鉄道らしからぬ急勾配です。
Click!
現在地
いよいよ、あと少しで廻り込める、というポイント。
ああ…向こう側が
やけに白いよ…。
こういう場合は大抵…
現在地
こうなるよね…。
またハデに崩れたもんだ。
行けるのか?これ。
落ちたら…まあ…
アレだ。
…。
現在地
まあ、行くけど。
これまでもそうでしたが、崩落自体は かなり昔のもの。
地面は固く締まり、安定しているからこそ踏破が可能だったのです。
そして この崩壊地を突破した後。
軌道跡らしき場所を求めて上へ下へと奔走したのですが、どうにもハッキリしない…。
Click!
現在地
この
「上へ下へ」という表現ですが、実は何の語弊もありませんで。
後ろを振り向けば今突破してきたばかりの崖があるし、先へ進もうにも
現在地
全く行き場がない。
もはやこれまでか…。
この崖は これまでの比じゃあありません。
ほぼ垂直に切れ落ちていて、軌道跡の面影を想像する事など不可能なレベル。
どうやってこの先へ繋いでいたというのか…。
現在地
とうとう軌道跡を完全に見失ってしまった。
どうにもならないので、今は
旧川根東街道へエスケープするより他に手がありません。
急ではありますが、幸いな事に登れない斜面ではない。
現在地
脱出。
で、ここは…
どこだ?
そんな感じで、
次話へ!
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探索!ウラ話
さて。
ヒルの猛攻に遭い、初日からメンタルに大ダメージを追った調査員。
一時は
「探索中止」というキーワードが脳裏に浮かぶほど凹みましたが…。
しかし既にレポートにあるように、ちゃんと2日目(翌日)も探索をこなしたわけで。
いったい、彼はどうやって立ち直ったのか?
結論から言うと、それは「カガクのチカラ」によるもの。
彼は
ヒル用の忌避剤がある事を知っていたのだ。
人間として、
ヒルに負けてなるものか。
だが忌避剤の存在自体は知っていたものの、自分がそれを入手する姿など 想像もしていなかったわけで。
情けない事に、「次の探索には それを装備して…」という考えに思い至ったのは夜も更けてから。
既に店舗は締まっているし、ネット購入など絶望的。
そう、次の探索予定日は
翌日なのだ。
…どうする?
そこで急ぎ検索したのは、
「代用品」について。
無いものは作ればいいじゃあないか。
検索結果として まず出てきたのが
「食塩水」
これだ。
これなら簡単に用意できる。
(*後日の調査によれば、忌避剤の代用としての食塩水は そこまで有能ではないらしい。
濃度についても、20%が良いとするもの、飽和するくらいが良いとするものなど様々。
他に有効なものとしては、食器用洗剤、ハッカ油、消毒用エタノールなどが見つかった。)
作戦はこう。
長靴+カッパ装備とし、カッパの裾に隙間が空かないよう養生テープでグルグル巻きにする。
簡易な胴長のイメージだ。
そして食塩水を入れた
霧吹きボトルを用意し、下半身に絶えず塩水を吹き掛けながら進む。
そうすれば奴らも上がっては来れまい。
(*これも後日調べですが、足首にタオルなどを巻き 忌避剤を染み込ませておくのが常道らしいです。)
そして翌日。
探索2日目。
果たして効果の程は?
2日目の結果。
0匹
良し!!
効果アリ、だ。たぶん。
強力な武器を手に入れた。
まだ戦える。
撤収作業中に、一匹の山ヒルを見つけた。
これは好機だ。
試しにそのヒルに食塩水シャワーを直撃してみた…。
……?
特に変化は…ない…。
あ、落ちた。
ナメクジに塩を掛けた時のように暴れながら縮んで絶命する姿を想像したのだが…?
特に外観に変化は見られず、そのまま静かに落ちたのだった。