民営森林鉄道の先駆け
智者山軌道
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第8話 敗北は冬の季語だそうだ。
今話は主に現地のレポートになります。
掲載している写真の縁取りが青ならば終点(土合)向き、橙色ならば起点(小長井)向きの振り返っての写真、と捉えてください。
レポート EP.8
全体マップはこちらから。
前話の続き。
現在地
軌道跡を辿る途上で出くわしたコンクリートの法面。
これは安全に通れない…。
やむなく 頭上を並走している
旧川根東街道へ退避する事に。
現在地
自然の土砂崩れ跡は問題なく通ってきたのに、現代の技術で地面を抑え込んだエリアは通れないという 何ともチグハグな話となりました。
現在地
何にせよ辿り着いた
旧川根東街道。
これが2024年3月時点での様子です。
これから この道を利用して先へ進み、折を見て軌道跡にアプローチ。
そこから可能な限り戻って軌道跡を踏破し、再び前進を開始します。
現在地
街道が放棄されてから どのくらいの年月が経つのかわかりませんが、まあ車の通行は不可能ですね。
ではバイクなら行けるか?というと…。
場所によっては路面が陥没・分断されていて段差が酷かったり 倒木が完全に道を塞いでいたりするので、よほど
気合の入った猛者ならば あるいは…。
しかし、それにしても。
街道に逃げ込んでから ずっと下側を覗き込みながら進んでいるわけですが…。
気軽に近づけるような立地にない。
灌木が酷くて全く見えない場所、急斜面過ぎて降りていけない場所。
高いコンクリートの擁壁があって手も足も出ない場所、などなど。
まあ軌道跡に降りてから
小長井方面に戻る算段なのだから、焦る必要はないのですが…。
現在地
どうにも降りられないまま 歩き続けていると、やけに水音がうるさい場所に出ました。
小長井河内川との比高は まだかなりあるはずだが、はて?
と、その先のカーブにガードレールの切れ目を発見。
あそこから降りられるか?!
期待を寄せつつ近づいてみると…。
現在地
…そうきたか。
「お
誂
え向き」という言葉がピッタリ当てはまるような、手すり付きの階段がそこにありました。
ゲームに例えるなら、絶対にこの後、何かしらのイベントが起きるはず。
誰もがセーブを希望する場面でしょう。
というのは冗談にしても、実際、探索初日はここで
時間切れ。
前話の『ウラ話』に書いたように、このまま
旧川根東街道と
連絡道を辿って車へ戻り、出直しを迫られたのでした。
そしてここからは探索2日目の始まり。
連絡道の入口に車を停め、ここまで直接歩いてきました。
日頃の行いが良いためか、この日もまた
雨。
しかも空の気配が若干怪しい…?
というわけで、急ぎ 探索行を再開することに。
秘密の施設への入口にしか見えない階段を降りると、そこはコンクリートで作られた人工的な段の上でした。
まずは左手(小長井方面)を向くと、そこには川へ向かって伸びる
排水路が。
周囲もコンクリートで構成されている上に 全面苔むしており、スリップは必至。
初日のイヤ〜〜な体験が脳裏をよぎります。
どのみち、ここからは降りられない。
結局ダメなのか?と落胆しつつ
右手(土合方面)を見ると…。
…なるほど、そうきたか。
今度は
梯子かい。
しかもこれ、固定されてるのか?!
鉄製ではあるけど、なんだかスゲー頼りないぞ。
いやまあ、行くけど!
どのみち他に行くアテも無し、これを使って降りるしかないのである。
しかしこうして降りてみれば、梯子は擁壁にしっかりと固定されていて堅牢そのもの。
なんだかCGで後から付け足したように見えるけど…、疑ってすまなかった。
さて、あとは…。
現在地
この急斜面を下って、軌道跡を探すだけです。
うまく立ち木に掴まりながらでないと とても歩けないため、自然、右へ左へのジグザグ降りとなるわけで。
と、ここまで来ると ずっと響いていた水音の正体をハッキリ見ることができました。
それなりに大きなダム。
ダムと言っても、これは
砂防ダムというやつか?
よく見ると2段になっているようです。
前話で大きいサイズの写真を載せた あのショット。
あの写真の奥に写っていた砂防ダムが、どうやらこれらしい。
ものすごい迫力。
まあ、こんな写真じゃあ伝わらないと分かっていますが…。
要するにこの一連の設備(階段など)は、この砂防ダムのメンテナンスのためにあるわけだ。
砂防ダムには川底や渓岸の崩れ防止、土砂の流出や土石流を食い止めるなど様々な役割がありますが、それはダムに貯まった岩・土砂・流木などの除去を適宜 行ってこそ効果を発揮するものなのです。
一応、川へ向かう踏み跡のような道があるにはありますが、時間も押していたため近づくのは辞めました。
さあ、本来の目的に戻ります。
何はともあれ軌道跡は…。
・・・。
・・・無いんだけど?
今、降りてきたルートと交差するような、それらしき平場はありません。
ただ、この周辺は砂防ダムの建設時に かなり地形を変えてしまっている可能性が高いわけで…。
とにかく 歩けるところを見つけて小長井方面に戻り、それらしき地形を探す事にします。
Click!
現在地
で、その結果がこのポイント。
位置的には現在位置を参照してもらうとして。
クリック後の赤ラインに示したように もう少し先までは行けましたが、その向こう側は判然とせず。
ほとんど戻ることができませんでした。
かなり長い距離で
未踏破区間が出来てしまったという 実に残念な結果…。
実際は この崩壊地を越えてさらに戻れば、もう少し断片が見つかったかもしれませんが。
今回は、ここで前を向くことにします。
旅の再開!
現在地
再開して すぐの地点で見つけたのが、これ。
祠の跡。
既に社は崩れ、屋根だけが残された状態。
これをもっと引いた位置から撮った写真がこちら。
巨木。
種類までは分かりませんが…。
この巨木の根元に祀られていたようです。
この特徴的な木は当時の杣人達にあだ名を付けられ、目印や名所のような扱いを受けたのではないか?
それがいつの間にか安全祈願のシンボルとして祀られるようになったのでは?
真実が判明する日は来ないでしょうが、智者山軌道に関わった人々の事が身近に感じられる、そんな光景でした。
祠を越えるとすぐに、最初の排水路のあたりに出ます。
ここからはしばらく 軌道跡は判然としません。
現在地
何となく石垣らしきものが在ったりするので、それを頼りに進んでみます。
現在地
…が、やはりダメ。
急激に反り立った崖に阻まれ、前進は不可能となってしまいました。
当時は、どんな地形だったのでしょうか…?
Click!
現在地
やむを得ず元の階段を昇り、再び
路上の人に。
ご覧のように 階段のある場所は
待避所になっていて、街道の現役時は 数少ない
すれ違いポイントだったでしょう。
さてさて、また
道路上から斜面を覗き込んで軌道跡を探すスタイルに逆戻りとなってしまいました。
現在地
そしてこの位置まで来て、ようやく降りられそうなポイントを見つける事ができました。
これが、降りてすぐの状況。
まあさすがに ここはまだ高度が高すぎです。
軌道跡はもっと下のはず。
Click!
現在地
あれ…かな?
と言うか、
崖だな。ここ。
Click!
現在地
復帰!!
と言ってみたものの、ほんの少ししか戻れてない…。
また
未踏破区間ができてしまいました。
とりあえず今は、前を向こう。
Click!
現在地
よしよし。
これでこそ軌道跡ですよ。
しばらくの間、こんな感じで続いてくれると嬉しいんですが…。
と、ここで下を見ると。
おお、
川が近づいてる!
まあそれでも10m以上あるのだけど。
先ほどの砂防ダムで、一気に比高が縮まったらしい。
Click!
現在地
所々で倒木が邪魔をしてきます。
ほとんどの場合 真っすぐ突っ切るのは難しく、上か下への迂回を余儀なくされます。
Click!
現在地
この区間、軌道跡らしい幅をもった平場が 続いているには いるのですが…。
やたらと大きな石がゴロゴロしていて、ちょっと これまでにない感じです。
Click!
現在地
ここは大きく抉れています。
Click!
沢の水が長い年月をかけて掘っていったのか、そのまま川まで続いていました。
もし現役当時から この沢があったとしたら、軌道はどうやってクリアしていたのでしょうか。
Click!
現在地
「なんとか軌道跡を辿って行けそうだ」と思ったのも僅かな間だけでした。
この地点を超えると、再び軌道跡は行方不明に。
どうなってんの、これ。
平らな場所が、そもそも無い。
写真もブレブレで申し訳ない。
この先の軌道跡がサッパリ分からず、上へ下への
迷走状態。
Click!
石垣の残骸かも?…といった微妙な手がかりと、直感だけが頼りです。
一応「こんな感じかな?」と思った予想ラインを赤で書き込んでいますが、(クリック後の画像)自信は全くありません。
Click!
ん〜〜、このライン…か?。
正直、
石垣自体も 本来の位置からかなりズレているパターンが多くなってきました。
Click!
現在地
よしよし。
あそこは間違いなく軌道跡でしょう。
斜面の角度がキツイ区間は崩れ易く、尾根状の傾斜の緩い場所は崩れにくいから残っている。
実に納得のいく現象です。
Click!
現在地
かなり広い幅をもって平場が残っていますが、どこからどこまでが当時のままなのか?
Click!
現在地
最初の頃の奇麗な軌道跡が、既に懐かしい。
が、残っているだけでも良しとするべきでしょう。
Click!
現在地
何やら、あそこで途切れているようですが…。
現在地
ここもまた、沢の水によって大きく抉られていました。
Click!
完全に分断された格好です。
Click!
現在地
沢を越えると、こんな状態。
ここまでの経験を踏まえて、「多分ここだろう」と思ったラインを突き進むしかありません。
Click!
現在地
あーー、イヤな予感が…。
Click!
現在地
!!
来ました。
特大級の崩壊地。
ごっそりと、まとめて無くなっています。
上を見ると、
旧川根東街道を支えてい石垣が崩壊しているのがわかります。
こりゃすげぇ。
まあそうは言っても現在進行形の崩壊ではなく、地勢は安定しています。
突破するのに問題はありません。
ただ 上下への迂回は どうしても必要なので、軌道跡の高さを見失わないように注意します。
現在地
突破したご褒美かのように、軌道跡がお出迎え。
良いじゃあないの。
Click!
現在地
あ…れ…?
Click!
現在地
…さすがにこれは、無理。
この旅もまだ中盤だというのに、
完全喪失区間が多くなってきました…。
現在地
無念の撤退。
次のアクセスポイントを求めて、再び
旧川根東街道へ。
いったい この先の軌道跡はどうなっていくんでしょうか…?
そんな感じで、
次話へ!
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探索!ウラ話
さて。
探索1日目を終えて、ヘトヘトになりながら車まで戻ってきたところから。
あ、写真はございませんので、ご安心を。
何話か前の裏話で書いた、
ヒルはくっ付いてきたのか?
噂の通り、智者山軌道跡は
ヒルの巣窟なのか?
というお話。
探索初日の結果。
4匹。
いやああああああああ…
そのうち1匹はウエスト付近に潜んでおりました。
こいつは絶対あの滑った時(
第5話参照)に付いたんだろう。
他のは足元から登ってこようとするやつ、水平に移動してるやつなどなど。
そりゃあね、
杣人・狩人などのプロ集団 や
山屋・沢屋・釣り師などの趣味ガチ勢の皆様方にとっては慣れっこなのかもしれません。
お笑いになるでしょうよ。
でもね…、
イヤなものはイヤだ。
今回は肉体的な被害はなかったから まだ良かったものの、精神的なダメージが大きすぎる。
体の見えない部分に昇ってきているヤツがいないか、必死で確認しながら撤収作業を行いましたとさ…。
んで。
さらなる悲劇はこの後。
その帰り道。車中。
左の太ももに違和感を感じて ふと そちらを見ると…。
!!!!!!。
ズボンの太ももあたりが、
血まみれやないかい!
プラス1匹。
もはや どうにもならないので服の上からその辺りを
ガシガシグリグリしておいて、適当な場所で車を停め、ズボンを下ろして該当部位を確認。
「お前、
いつの間に…。」
既に息絶えた黒い塊と共にある、
咬み跡と血の海。
ああああああああ!
2度と行くかぁ!
うわああああああ!!
トラウマ級の傷を心に負った調査員。
果たして、どうやってメンタルを回復させ 2日目の探索行に臨む事ができたのか?!