民営森林鉄道の先駆け
智者山軌道
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第11話 十票入った。黒板に「8」の字が二つ、縦に並ぶ。 〜中編〜
今話は主に現地のレポートになります。
掲載している写真の縁取りが青ならば終点(度合)向き、橙色ならば起点(小長井)向きの振り返っての写真、と捉えてください。
レポート EP.11

全体マップはこちらから。
土砂崩れによって、ごっそり無くなってる…。
一応 周囲を確認してみるも、左岸側にあったような明確な石垣の橋台というものは見当たらない。
ただポジティブに考えるならば、地図的にはもっと戻った位置に橋台があるはずなので この土砂崩れには巻き込まれていない可能性が高い。
と言うか、
そうであってほしい。
結局のところ、今回は
「終点の現地確認」という最大の目標を優先するため、街道を戻っての橋台跡探索は行いませんでした。
再訪して確認するかどうかは…また考えよう…。

Click!
現在地
で、先程 降りてきた地点まで戻りました。
5枚上の、
【?】マークでいっぱいになった地点。
実は この先の区間は、智者山軌道を辿る者にとっては できる限り
踏破を目指したいエリアにあたります。
その理由は白井氏のレポートに書かれていた この記述。
「P11 : 馬路橋は上路アーチ鉄橋でそのすぐ奥に名物の8の字カーブがあり、切り取と桟橋の難工事であった。8の字は通称で実際はR=10m位と推定される急なSカーブであり、貨車が脱線することもあって建設、運転上の難所であったが最後まで大事故はなかった。」
「P13 : これより奥日掛林道へ入り間もなく東側の橋台へ降り、8の字カーブ跡を歩くことができる。」(産業考古学 Vol.112 智者山森林軌道の調査報告/産業考古学会・2004)より)
そう、
第1話で取り上げた地図にも描かれているとおり、ここは
智者山軌道名物の 8の字(S字)カーブ入り口に当たるはずなのです。
なんとか踏破して、全容を解明したい。
でまあ こんなにハッキリと
ランドマーク的な書かれ方をしているので
「容易く見つかるだろう」などと軽く考えていたわけですが…。
現実は甘くなかった。
そもそも橋台跡の視認をすることができていないので、
「自分が今立っている場所が軌道跡である」という確証が持てない状態。
「ここまで辿ってきた。」という事実はけっこう重要なのだなぁ、と今更ながら実感です。(途中途中で踏破できてない区間もあったけど…)
他に手掛かりは無いのか?と言えば
「石垣による擁壁」が挙げられるわけですが、周りを見渡せば 明らかに人の手が加わったと思われる石積みの跡などがそこら中に散在しており、どれがどれやら。
さらには
道らしきスジが何本も交錯しており、お手上げ状態となってしまいました。
話は少し逸れますが、
『軌道跡を見失う・辿れなくなる』パターンについて考えてみます。
自分は
「山さ行がねが」という廃道・廃線の調査をメインとするサイトのファンである事を公言してきました。
サイト制作者の平沼氏は、軌道跡や廃道を途中で辿れなくなる
『よくある2つのパターン』について、こう書かれていました。
まず一つは
【埋もれ】

Click!
第10話より
上部から流れ込んだ土砂などによって調査対象が埋まってしまったパターン。
道はまだ(一応)存在しているわけだから 状況としてはマシな部類に入ると言えるでしょう。
踏破できる可能性も、低くはありません。
もう一つは
【欠け】

Click!
第9話より
調査対象の一部区間が、土砂崩れなどによって完全に欠損した状態。
辿るべき道自体が永遠に失われ、誰一人として 二度とそこを歩くことができない『道の終わり』とも言えます。
調査行においては 正規のルートが分からなくなる上に、突破するのに非常に苦労する厄介な状況となる事が多いです。
そして今回、自分は
第3のパターンによって道跡をロストする事態に陥っていました。
そのパターンに勝手に名前を付けさせてもらえるなら、
【紛れ】

Click!
おいおい。

Click!
おいおいおい。
この写真は、「もしかしたら ここが軌道跡じゃあないか…?」と感じた平場を とりあえず進んでみた時のものです。
で、
紛れとは、このように放置された
間伐材が山肌いっぱいに散在し、ルートを辿るのが困難な状況を指しています。
ただし これだけなら、丸太をそのまま乗り越えたり
(危険だし、体力を消費する)
かなり迂回する
(見失う確率が上がるし、何度も登り降りを繰り返すため めちゃくちゃ体力を消費する)
など、進行のペースこそ落ちるものの、辿っていくのは不可能ではありません。
現に、この平場の行く末も辿ることができています。

Click!
行き止まりだったけど。
「紛れ」のパターンにおいて最高に厄介な状況となるのは、散在する間伐材に
これ↓が加わった時。

Click!
現在地
作業道。
これは調査4日目に撮影した写真。
とりあえず『作業道』と書いてはみたものの、そもそもこれは何なんだ。
本当に間伐の為の作業道なのか?
例えば小型の重機を入れるための一時的な道だとか?
とにかく、
軌道跡と見紛うサイズの平場が縦横無尽に走っていたのです。

Click!
これにはまいった…。
俯瞰して大まかな線形を想定しようにも、今度は間伐材が一面を覆い隠してしまって 何が何やら…。
既に書いた通り、ここは
『8字カーブの入口から最初のヘアピンカーブが始まるまで』の重要な、それでいて
『通常とは違う特殊なライン取り』をしているであろう地点。
順に辿っていけない以上は、手も足も出ないわけで…。
いやはや、前もって詳細な予習をしてくるんだった、と思ったところで後の祭り。
時間も惜しい。
この区間の解明もまた、宿題として残すはめになってしまいました。
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