民営森林鉄道の先駆け
智者山軌道
TOP
第1話
第2話
第3話
第4話
第5話(前/後)
第6話(前/後)
第7話(前/中/後)
第8話(前/中/後)
第9話(前/中/後)
第10話(前/中/後)
第11話(前/中/後)
第12話(前/中/後)
第13話(前/後)
第14話(前/後)
第14話 「いよいよだな。ああ、なんだかドキドキしてきたよ」 〜後編〜
今話は主に現地のレポートになります。
掲載している写真の縁取りが青ならば終点(度合)向き、橙色ならば起点(小長井)向きの振り返っての写真、と捉えてください。
レポート EP.14

全体マップはこちらから。
現在地
ところで、少し前から何やら音が聞こえる事に気付いていました。
人の話し声?
いや、機械の…?
とにかく
人為的な音が聞こえます。
見上げれば、頭上に広がる
コンクリートの法面。
頭の上から聞こえるようになったその音は、まさに
現在建設中の
川根東街道からのもの。
それも、
馬路トンネルを抜けた先のヘアピン橋が、工事の真っ最中であるようです。
現在地
前方には道幅いっぱいに広がった倒木の山。
工事に関連して伐採されたものと、自然に倒れたものが混在しているようです。

Click!
現在地
見上げるのも恐ろしい急斜面。
なにしろ
千頭以奥は地滑りの巣。
道路建設には、強固な法面工が欠かせません。
特徴的な見た目から、
グラウンドアンカー工と呼ばれる種類のものでしょうか。
そんな事より心配なのは、現在の自分の置かれた状況です。
いくら道路上を歩いているとは言え、ここは
廃道。
まさか
人が歩いているとは誰も思うまい。
何が落ちてきても不思議はないのだ。
ここは1秒でも早く通り過ぎるべきでしょう。

Click!
ちなみに上空から見ると こんな位置関係。
現在地は、
国道362号線「本川根〜静岡バイパス」(通称:富士城バイパス)工事区間のヘアピンカーブ先端直下あたり。
このヘアピンカーブも『橋』になるはずですが、特別な名称が付けられるっぽいですね。
見晴らしはかなり良いはずなので、新たな名所になるのは間違いない…でしょう。
地図からも分かるように この工事区間(U-1工区)が全て完成しない限り、
約20年前の
平成15(2003)年6月に既に貫通している
馬路トンネルも、通行不可のままです。
開通予定の
令和8(2026)年度を待たなければなりません。
現在地
下を見ると、いつの間にか
小長井河内川が すぐ近くにまで迫ってきていました。
林道はずっと緩やかな登り勾配ですが、少し前に見た
堰堤などで一気に高度が追い付いてきているためでしょう。
そして見ての通り、林道と小長井河内川との間には
狭く急な斜面しかありません。
「林道下並行説」は、完全に除外してよさそうです。
現在地
もはや妖怪か何かと見紛うくらいの倒木が、何度も立ち塞がるようになりました。
現在地
かと思えば 急に優しい顔を見せてきたりするので、廃道歩きは面白い。
現在地
こんなような場所を、もう何度も越えてきました。
現在地
少し穏やかな地点。
山の斜面がなだらかなせいか、擁壁などは作られなかったようです。
現在地
ここで大きく右にカーブします。
奥の方にAバリ(A型バリケード)が見えてきましたが、かなり年季が入っている様子。
轍を見なくなってだいぶ経ちますが、
昔はちゃんとトラックが通っていたことを思い出させてくれる一品です。
現在地
振り返ると、こんな感じ。
ここは少し広くなっており、トラックの転回や離合が行われた場所かもしれません。
終点【度合】まで、あと少し。
少し脱線して。
このあたりまで来ると、ヒルの侵略が激しくなってきました。
多くいる場所と、全くいない場所が交互にあるようです。
しかし
塩水コーティングに抗う術は無いらしく、上まで登ってくる奴はいません。
全国的に言われている事なのかどうかはわかりませんが、
「木の上から降ってきたヒルに首元をやられる」的な話があります。
ヒルが炭酸ガスに反応するため、数人のパーティーで歩くと
先頭の者に反応したヒルが木の上から降ってきて 後ろを歩く者が被害を受ける、という意味。
これについて、以前
川根本町資料館やまびこ に立ち寄った際に、面白い研究レポートを教えていただきました。
「実際に木の上からヒルが落ちてくるのか?」
「そもそもヒルは木を登るのか?」
という実にシンプルなこれらの疑問について 地元の小学生が実証・研究したもの。
で、実際には
「落ちてこない」とのことで、とても心強い結論じゃあないですか。
実験方法や その結論に至った経緯など、詳しい内容は
川根本町資料館やまびこに お立ち寄り頂き、実際に読んでみてください。
とても面白いレポートですよ!
現在地
Aバリの所へ、話を戻します。
最終目標である
終点「度合」は、もうすぐ。
現在地
この直線の途中に、終点となるポイントがあるはずです。
目印となるのは、
小長井河内川が二又に分かれる地点。
そこを目指します。
現在地
ところで このレポートの公開当初、終点
【度合】を、
【土合】と表記していました。
読み方は同じ
【どあい】です。
どちらも間違いではないようですが、当サイトも白井氏に倣って
【度合】表記に訂正しました。

Click!
現在地
!!!
遂にこの時が来た…。
2本の流れの合流地点。
長かった旅も、ようやくこれで一つの決着を見ます。
そう、ここが終点。
【度合】
現在地
「これより先、軌道はだんだん川底へ近づきよく分からなくなり、終点にも特定の遺産は見当たらない。」(産業考古学 Vol.112 智者山森林軌道の調査報告/産業考古学会・2004)より)
白井氏のレポートにもあるように、周囲に軌道の終点を匂わせるような物は何も見い出せません。
ただ過去の地図や資料からの判断で、『この辺りであろう』と見当を付けるしかないのが実状です。
いずれの地図も、
大きめの支流(地図右側からの流れ)と
本流(地図上方から来る流れ)が合流するポイントを終点としています。
後に作られた
奥日掛林道は、本流に沿うようにして この先さらに約1.2kmほど続いています。
現在地
林道上より川を眺める。
すぐそこに流れがあるように見えてしまいますが、足元には石垣が。
林道と川とでは、3〜4m位 高さに差があるのです。
現在地
少し下流方向を向いた写真。
高低差が分かるでしょうか。
本当は河原に降りての調査もしたかったのですが、近辺にはアプローチできそうな場所さえありませんでした。
現在地
本流の先を眺める。
小長井河内川は、智者山へ向かって ここからさらに伸びていきます。
ここ度合では索道と木馬道を使って集材していたとの事なので、もしかしたら智者山まで視線が通るかもしれない…。
と思って探すものの、木々に遮られて視認できず。
アプリでも使えば良かったかな?
とまあこんな感じで、いささか拍子抜けするくらいあっさりと 長旅は終わったのでした。
さて・・・
帰るか!
【勝手に大井川】開設2周年特別企画・智者山軌道編。
いかがだったでしょうか?
調査が終わってからレポートを書き終えるまで9ヵ月もかかるとは、誰に予想できようか。
ダラダラと続けてしまって申し訳ない。
それにしても、
「現地調査をすると謎が増える」というパターンは、もはや王道ですね。
近いうちに追加調査に出向く事になるんでしょう…。
…たぶん。
それにしても、今回の調査で痛感しましたよ。
「360カメラ欲しいな!」ってね。
でも予算がね…。
いつかね…。
名所File No.14
智者山軌道
営業時間:営業終了
所在地:静岡県榛原郡川根本町 東藤川
交通アクセス:大井川鐡道 千頭駅より 徒歩10分