民営森林鉄道の先駆け

智者山軌道

TOP
第1話 第2話 第3話 第4話
第5話(/) 第6話(/
第7話(//) 第8話(//
第9話(//) 第10話(//
第11話(//) 第12話(//
第13話(/) 第14話(/



第13話 カーブ曲がったところで、吉兵衛はすぐに異変に気づいた。 〜前編〜


今話は主に現地のレポートになります。
掲載している写真の縁取りが青ならば終点(度合)向き、橙色ならば起点(小長井)向きの振り返っての写真、と捉えてください。

レポート EP.13
智者山軌道

全体マップはこちらから。



前話の続き。

智者山軌道
現在地

立ち塞がる巨大な崩落地形。
これまで遭遇してきたものは いずれも古く、地面が固く締まっていたため 突破するのにそれほど苦労はしませんでした。
しかしここは現在進行形。
気楽に足を踏み入れる事ができません。

ここまで来て、突如として旅の終わりを告げられてしまった恰好です。
それも一方的に。

とは言え、これまでの道程を思えば 容易に諦められるわけもなく…。
どうにかして向こう側へ渡る手段は無いものか、ひたすら安全そうなルートを探します。

それにしても…何処かで見た景色なんだよな…。

んー・・・。

・・・あ。

ここ、amehataF.氏X で投稿してた場所だ。
とすると、この下の方に

レールが転がっているはず!!

智者山軌道 Click!

あれか!!

これは、何としても降りなければ!

まずは正面に見える斜面へ向ってみます。

智者山軌道
現在地

足元のコンクリート側溝を境にして 向こう側が崩れているわけですが、そこからのアプローチはどうか?
と、斜面に最接近したところで…

智者山軌道 Click!

何か生えてますけど!?

あれはどう見てもレールだ!!
しかも2本!!

え、ちょ、何これ?
下に落ちてる(はずの)レールって…まさかここから?
とととにかく一旦落ち落ち着いて、観察しよう。

とは言ったものの、残念な事にレールの生えている斜面はやや脆く しかも急で、危なくてこれ以上は近づけません。
必死でカメラに収めた写真を分析するしかないわけですが、とりあえず手前のレールを【A】、奥のレールを【B】としましょう。

智者山軌道

まずは【レールA】から。
太さなどの詳細寸法は、さすがに分かりません。
それにしても かなり長く突き出ていますねぇ。
一般的な廃レールの再利用方法を思い浮かべてみると

・短く切って地面に突き刺し、柵に転用
・何本も積み重ねて土留めに
・桟橋などの構造物の補強に
・縦にして、標識の柱や半鐘を吊るす(やぐら)

などなど。
これらが代表的なところでしょうか。
こう考えてみると “長いままでの再利用方法” は いくつもあるわけで、不自然とまでは言えません。

で、一番気になるのは その先端!

智者山軌道

あのレール、ペーシ(継目板)が付いたままだ!

どういうこと?
何らかの理由で ここで「廃レールを再利用した」としても、ペーシは必要ないでしょ…。
もちろん、外すのが面倒くさかったり 錆ついて外れずにそのままというパターンもあるだろうし、“あり得ないという事はない” わけだけど。
果たして、どんな理由によるものなんでしょうかね?
とにかく、そもそもの疑問・「なぜ斜面に対して垂直に突き出ているのか?」を説明できるような材料は見つかりそうもありません。


さあ、そして …問題なのはこっちだ。

これをどう判断しろと言うのか。

今レポート中、最大の謎が こんな所にありやがった。

智者山軌道
【レールB】

こちらはレールAほど突き出てはおらず、ペーシも付いていません。
だが…別の物が付いてます。

智者山軌道

あれは…

あれは何だ?


智者山軌道

動物の顔…じゃなくて…何やら…木の塊っぽいが…?

あれってもしかして!

枕木 & 犬釘?!

枕木とはレールの下に敷かれている木材の事で、犬釘はレールを枕木に固定するための釘の事です。
って、いやいや…さすがにちょっと夢を見すぎか。
白井氏のレポートにもあるように、
〜軌道を廃止することとし、馬路の鉄橋を除くすべてを撤去、売却した。GL、レールなどすべてを売却清算し1955年度で軌道事業を廃止した。」
というのが 智者山軌道の通説(注:GLはガソリン機関車、1955年は 昭和30年)
実際ここまで辿ってきた軌道跡上において、レールも枕木も ただの一度も見てはいないのだ。

…だが…。

しかし…。

現実はいつだって 想像を凌駕する!

智者山軌道 Click!

これは何に見える?!

他の写真からも切り出してみましょう。

智者山軌道

撮影時には そんな事を考えもしなかったため、ピンボケの写真ばかりという情けない体たらく。
まず目を引くのは、木と直交するように付いている赤茶けたライン。
これはレールの錆が写ったものではないだろうか?
その傍らにある丸い突起は、もしや犬釘が残っているのか?
一番右の写真は裏側から撮影したものですが、それなりの長さ・厚みがあることも確認できます。

いや、これ完全に 枕木 でしょ!?
しかも状況的に考えて、「軌道が敷かれた状態で土砂に巻き込まれてる」よね絶対!!
もし この想像どおりなら、通説をひっくり返す大発見ではないかと思うのですけど。

ただ、疑問が無いわけではありません。
枕木の役割や配置について考えてみれば、もっとあっていい はず。
1本だけ、というのは逆に不自然なのです。
正直言うと、調査時には この物体の存在に気づいていなかったために「探さなかった」のもまた事実。
「あるはずがない」と思い込んでいました。
まだまだ青いな自分…。
でもまあ こうなった以上はね、もうね、再調査決定ですよね、どう考えても。
しかし この調査時から既に一年近く経過しているので、現状がどうなっているかな…。

後編へ


TOP